なぜ今、“残るものの価値”に惹かれるのか|インフレ時代の選択

暮らしと価値観

― インフレ時代の私たちの選択 ―

私は最近、「残るものの価値」について考えることが増えました。
手元には3つのマグカップがあります。

一つは、引っ越してきたときに緊急で買った100円均一のマグカップ。
必要に迫られ、すぐに使えるものとして選びました。

もう一つは、自身の昇格のご褒美として背伸びをして買ったエルメスのマグカップ。
鮮やかな色彩と繊細な絵付けに惹かれ、「良いものを持つ喜び」を初めて強く感じた器でした。

そしてもう一つは、絵付けの美しさに心を奪われた三河内焼 嘉久正窯のマグカップ。
日本茶にも、紅茶にも、ハーブティーにも自然と馴染み、日々の暮らしに静かに寄り添ってくれています。

どれも価格も役割も異なります。
けれど、それぞれに思い出があり、今でも大切に使っています。


昨今、私たちを取り巻く環境は大きく変化しています。

生鮮食料品だけではなく、日用品や家具、器に至るまで、あらゆるものの価格が上がり続けています。

以前であれば、
「安価で使いやすいものを選ぶ」
という考え方が一般的だったかもしれません。

もちろんそれは、今でも大切な選択です。

必要な機能があり、無理なく買える価格であること。
それは暮らしを守るうえで、とても現実的で健全な判断だと思います。

しかし、インフレという現実を意識したとき、
人々の“選ぶ基準”そのものが少しずつ変わり始めているように感じます。


私は、これからの時代には大きく2つの考え方があるように思っています。

「価格を主軸にする」

生活スタイルとして支払うことができる品を選ぶこと。

求める機能が備わっていれば、
その時のお財布の中で最適なものを選択する。

限られた資源の中で暮らしを整える、非常に現実的な考え方です。


「品物の質を主軸にする」

これからさらに価格が上がると考えるのであれば、
まだ価格が落ち着いている今のうちに、“長く使えるもの”へ先行投資する考え方です。

一見高く見えても、

  • 長く使える
  • 修理しながら使える
  • 時間が経っても美しい
  • 愛着が増していく

そうしたものには、単なる価格以上の価値があります。

工芸品やジュエリー、上質な器が支持され続ける理由も、そこにあるのかもしれません。


もちろん、価値を感じるものに人が集まれば、
その品はさらに希少になり、価格も上がっていきます。

人々が「本当に欲しい」と感じるものは、
単純な数だけではなく、“人の心理”によって価値が変化していくからです。

オイルショックの際のトイレットペーパー騒動も、ある意味ではその一つだったのかもしれません。

希少性とは、必ずしも最初から存在しているものではなく、
「欲しいと思う人が増えること」で生まれていくこともあるのです。


AIやデジタル化が進み、
目に見えないものが増えていく時代。

だからこそ今、人は少しずつ“実体のあるもの”へ戻り始めているようにも感じます。

触れられるもの。
時間と共に使い続けられるもの。
そして、自分の人生の記憶と重なっていくもの。

それは単なる贅沢ではなく、
これからの時代における「心の豊かさ」なのかもしれません。


残るものには、時間を超える価値があります。

それは私たちの暮らしを静かに支え、
未来へとつながっていくのだと思います。

あなたは、これからの時代、どんな“残るもの”を選びますか。

以前書いたカルティエの記事でも、“長く残る価値”について触れています。

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